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「滋賀の魅力」ブログ
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2023.03.09
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第16回 AKINDO塾 レポート
東京滋賀県人会では、滋賀県に所縁のある人々や会員同士の人脈形成、ネットワークの構築、知識の向上を支援する目的で、2016年秋以降『AKINDO塾』を定期的に開催しています。
第16回は、2月12日に、「京都つゆしゃぶちりり 京橋店」にて、前ここ滋賀副所長で現在滋賀県琵琶湖環境部 琵琶湖保全再生課長の中嶋 洋一氏を講師にお迎えし、開催いたしました。
なお、今回のAKINDO塾は、初の試みとして、令和5年度東京滋賀県人会新年会と同時開催の特別講演という形式です。
演題を『琵琶湖版SDGs「マザーレイクゴールズ(MLGs)」と持続可能な滋賀について』としてお話しいただきました。
中嶋 洋一 氏
講演要旨は以下の通りです。
琵琶湖版SDGs「マザーレイクゴールズ(MLGs)」と持続可能な滋賀について
滋賀県琵琶湖環境部 琵琶湖保全再生課長 中嶋 洋一
滋賀県近江八幡市生まれ。「ここ滋賀」副所長を2年間務め、総合企画部CO2ネットゼロ推進課を経て、現職。今日は、琵琶湖版SDGsである「マザーレイクゴールズ(MLGs)」と持続可能な滋賀について、話したい。
「持続可能」という言葉は、1987年のブルントラント委員会の報告書で定義され、2015年の国連サミットで、持続可能な開発目標(SDGs)として、17の目標が定められた。琵琶湖の歴史を振り返ってみると、江戸時代から瀬田川の浚渫が悲願であったが、下流の反対や軍事上の理由などから容易には認められなかった。このため、何度も洪水に見舞われた。「内湖」も干拓により失われた。1970年代、淡水赤潮の大発生に端を発する富栄養化が大きな問題であった。これに対処するため、住民による「石けん運動」が広がり、下水道の整備、工場排水対策、農業濁水対策が進み、琵琶湖の水質は改善した。ただ、漁獲量は減少傾向。水草の繁茂も問題で、刈取り対策などが講じられている。
マザーレイクゴールズ(MLGs)は、令和3年7月1日(「びわ湖の日」40周年記念日)に策定された。2030年をゴールとして、13の目標が設定された。この目標については、10年以上かけて、様々な話し合いが行われた。琵琶湖を通じて、SDGsをアクションにまで、落とし込むことを目指している。
●Goal 1 「清らかさを感じる水に」:アオコや赤潮などのプランクトンの異常発生が抑制され、飲料水として問題がなく、思わず触れたくなるような清らかな水が維持される。
●Goal 2「 豊かな漁場を取り戻そう」:在来魚介類の生息環境が改善し、資源量・漁獲量が持続可能な形で増加するとともに、人々が湖魚料理を日常的に楽しむ。
●Goal 3「 多様な生きものを守ろう」:生物多様性や生態系のバランスを取り戻す取組が拡大し、野生動物の生息状況が改善するとともに、自然の恵みを実感する人が増加する。
●Goal 4「 水辺も湖底も美しく」:川や湖にごみがなく、砂浜や水生動物などが適切に維持・管理され、誰もが美しいと感じられる水辺景観が守られる。
●Goal 5「 恵み豊かな水源の森を守ろう」:水源涵養や生態系保存、木材生産、リクリエーションなどの多面的機能が持続的に発揮される森林づくりが進み、人々が地元の森林の恵みを持続的に享受する。
●Goal 6「 森川里湖海のつながりを健全に」:森から湖、海に至る水や物質のつながりが健全に保たれ、湖と川、内湖、田んぼなどを行き来する生き物が増加する。
●Goal 7「 びわ湖のためにも、温室効果ガスの排出を減らそう」:日常生活や事業活動から排出される温室効果ガスを減らす取組が広がり、琵琶湖の全層循環未完了などの異変の進行が抑えられる。
●Goal 8「 気候変動や自然災害に強い暮らしに」:豪雨や渇水、温暖化などの影響を把握・予測し、そうした事態が起きても被害を受けない暮らしへの転換が進む。
●Goal 9「 生業・産業に地域の資源を活かそう」:地域の自然の恵みを活かした商品や製品、サービスが積極的に選ばれ、地域内における経済循環が活性化し、ひいては環境が持続的に守られる。
●Goal 10「 地元も流域も学びの場に」:琵琶湖や流域、自分が生活する地域を環境学習のフィールドとして体験・実践する機会が豊富に提供され、関心を行動に結びつけられる人が増加する。小学5年生は「うみのこ」として乗船体験、4年生は「やまのこ」、また、「たんぼのこ」の体験を実施。
●Goal 11「 びわ湖を楽しみ、愛する人を増やそう」:レジャーやエコツーリズムなどを通じて自然を楽しむ様々な機会が増え、琵琶湖への愛着が育まれる。
●Goal 12「 水とつながる祈りと暮らしを次世代に」:水を敬い、水を巧みに生活の中に取り込む文化や、水が育む生業や食文化が、将来世代へと着実に継承される。
●Goal 13「 つながりあって目標を達成しよう」:年代や性別、所属、経験、価値観などが異なる人同士、また異なる地域に住まう人同士がつながり、琵琶湖や流域の現状、これからについて対話を積み重ね、その成果を共有できる機会が十分に提供される。
これまでマザーレイクの賛同者(令和5年1月31日現在)は1394者。ロゴマークの利用届出は207者。ワークショップは、40事業。MLGsをテーマとした環境学習も数多く行われている。読売テレビの24時間テレビやイナズマロックフェスでもPR活動を行った。MLGs体操100万人プロジェクト(令和3~4年)も広がっている。国際発信としては、第4回アジア・太平洋水サミット(令和4年4月23、24日 熊本市)で、三日月知事自らがMLGsについて講演し、パネル出展などを含め発信した。
かつての「石けん運動」の原動力となった「自分たちで琵琶湖を守ろう」という自治の精神は、琵琶湖と暮らしとの関係性が見えにくくなってしまった今も、「MLGs」という新たな枠組みとして受け継がれ、多様な主体による自主的・自発的な行動を促している。
(質疑応答)
(賛同者が少ないような気がするが):企業の賛同者が7割ぐらいで、キャンペーンに協力していただく企業が多い。引き続き努力して行く。
(滋賀県が、SDGsの理念を踏まえて、このような活動をされていることに感銘を受けた。他の地域で、このような例はあるか):大阪湾の環境保全で、同様な動きがあるようだが、目標設定について、滋賀県のように住民参加の形で、長年にわたって対話を重ねてうえで、これをまとめたような事例は聞いていない。
(文責 塚本 弘)