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2020.11.26

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第11回 AKINDO塾 レポート

東京滋賀県人会では、滋賀県に所縁のある人々や会員同士の人脈形成、ネットワークの構築、知識の向上を支援する目的で、2016年秋以降『AKINDO塾』を定期的に開催しています。

第11回は、11月6日(火) ここ滋賀2階「滋乃味」にて、講師に大杉 栄嗣 氏【大塚オーミ陶業(株)代表取締役】をお迎えし開催いたしました。

演題を「大塚国際美術館の魅力と焼き物の可能性」として、焼き物による文化財などの複製制作にも長年携わってこられた経験に基づくお話や、大塚国際美術館所蔵の陶板画(世界の名画)の開設など興味深いお話をお聞かせいただきました。

大杉 栄嗣 氏

講演要旨は以下の通りです。

1968年、徳島の吉野川の掘削で生じた砂の有効利用からこのプロジェクトは生まれた。1970年に徳島に実験工場を建てて、大きな焼き物に挑戦。ついには、1980年、陶板の工場を作るに至った。陶板は、縦90cm、横3m。
大塚グループ創業75周年の記念事業として、1998年に鳴門市に大塚国際美術館を開館し、世界25ヵ国、190余の美術館からの1087点の美術品の陶板展示をしている。

この美術館の特徴は、環境展示である。バチカンのシスティーナ礼拝堂やパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂のように、実際の大きさの空間を再現しているので、観客は、本当にその場所を訪れたような気分になれる。

大塚国際美術館(Wikipediaより)

制作の舞台裏をお話しすると、まず、当局から陶板複製の許可をいただく交渉から始まり、現地調査、さらには、陶板作成というプロセスを経る。一番苦労するのは、本物の色の再現だ。専門家の先生にも監修していただき、色の濃淡などをチェックしてもらう。陶板の良いところは、何回も焼き直しができるところだ。最後は、駐車場にずらっと並べて、チェックをし、現地の専門家にもきてもらって、意見を聞く。

もう一つの特徴は、系統展示である。例えば、ゴッホのひまわりは、各地の美術館に点在しているが、ここでは、7つの花瓶に入ったひまわりが見られる。
また、ダヴィンチの「最後の晩餐」のように、ミラノの教会では、修復後のものしか見られないが、ここでは、修復前のものが見られる。
さらに、キトラ古墳の絵画のように、劣化しやすいものも、陶板画にすることにより、耐久性が高まり、一般の方々に見ていただけ、時には、触っていただくこともできる。パリの縄文展には、火焔型土器のレプリカを出展し、市民の皆さんに触って楽しんでいただいた。

再現されたシスティーナ礼拝堂(Wikipediaより)

(質疑応答)

●陶板画への需要はいかがか
>学校、病院、顕彰碑などがある。

●海外の作品の著作権の交渉の苦労は?
>個々によって異なる。イタリアとは、文化省と包括契約。ピカソは、毎年、支払う。

●ノートルダム寺院の火災、バーミヤンの石像破壊など、文化財の毀損に対し、陶板は、とても役に立つのではないか
>正に、我々は、セラミック アーカイブという活動をしており、タイでは、実例がある。また、ラスコー洞窟の壁画なども手がけたい。
ただ、欧米には、今も複製画に対する意識の違いがあり、本物が経年劣化するのは、それが自然だから、複製に価値を見出せないとの考え方もある。

 

当社は、2年前、「ものづくり日本大賞」をいただき、これからも頑張っていきたい。

(文責 塚本 弘)

※今回のAKINDO塾では、新型コロナウィルス感染症流行防止のための試みとして、はじめてZoomによるオンライン参加も実施いたしました。

 

 

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