一般社団法人東京滋賀県人会

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第9回 AKINDO塾 レポート

公開日 : 2019.9.12
第9回 AKINDO塾 レポート

東京滋賀県人会では、滋賀県に所縁のある人々や会員同士の人脈形成、ネットワークの構築、知識の向上を支援する目的で、2016年秋以降『AKINDO塾』を定期的に開催しています。

第9回は、8月22日(木) ここ滋賀2階「滋乃味」にて、講師に谷畑 英吾 湖南市長を迎え、開催いたしました。

演題を「囚われに因って困ることのない自由な発想で進めるまちづくり」として、滋賀県庁、湖南市と長年地方自治の最前線で活躍してこられました谷畑市長から、持論や戦略について市政を縦横に語っていただきました。

谷畑 英吾 湖南市長

講演要旨は以下の通りです。

世界は、大きく変化。これまでの常識が非常識に、非常識が常識になるような時代。世界は冷戦から、アメリカ一強を経て、今は、流動化。日本は、society5.0の超スマート社会の到来。サイバー空間と現実が一体化し、AIとIoTが重要。人口減少と少子高齢化社会の中で未来投資戦略2018などが進められており、外国人労働者も増えてくるので、多文化共生社会を構築すべき。その中で、それぞれの地域が自律して繋がる地域循環共生圏の推進が大事である。

非常識の発想のきっかけは、某湖南市議会議長の口ぐせが、「皆さんようこそ湖南市にお越しくださいました。この湖南市は、な〜〜〜んにもないまちでございま〜す」。しかし、阪神、中京、北陸にそれぞれ100km、大規模な湖南工業団地、湖南三山、酒蔵、障がい福祉先進地など誇れるものが一杯ある。

そこで、「囚われに因って困ることのない自由な発想で進めるまちづくり」についてお話ししたい。 まず、わが国「社会福祉の父」と呼ばれる糸賀一雄氏が、近江学園を大津市から湖南市に移転されたこともあり、湖南市は福祉の課題解決を目指している。どんなに重い障がいがあっても、あわれみの視点ではなく、この子が持っている育つ力を輝かそう、すなわち、「この子らを世の光に」という考え方で取り組んでいる。具体的には幼児から就労に至るまで、切れ目のない発達支援システムを構築し、サポートしている。これは発達障害者支援法となり全国の自治体の常識となった。「障がいのある人が地域でいきいきと生活できるための自立支援に関する湖南市条例」では、市民の責務として、積極的またはさりげなく応援としたが、このさりげなくは、責任逃れではないかとの反対意見があった。しかし、さりげない支え合いのまちづくりが重要と譲らず。その後、国の障害者差別解消法で、合理的配慮が提供されることという条文が入った。これは正に、湖南市条例と同じ考え方であり、非常識が常識となった一例である。また、市役所は就労斡旋が禁じられているが、障がい者の仕事の開拓は大事なので、障がい者就労情報センターやチャンスワークこなんを設置し、サポート。これも、非常識が常識にの事例。その他、アールブリュット(生の芸術)、地域福祉を活かしたスポーツの推進(交流いきいき風船バレー、知的発達障がいのある人のスペシャルオリンピック)、障がいのある人が農業の担い手になる農福連携事業、健康で長寿の高齢者のためのいきいき百歳体操、こなんTHEボイスプロジェクト、シルバー農業塾、安心応援ハウス支援事業、こなん市100歳大学、認知症対応型デイサービスセンター、障がい者サービス事業所なども進めている。

学校教育の課題解決では、元気の出る教育現場を目指している。先生が元気ではじめて子どもに向き合うことができる。教員を大事にするため、チーム学校(モンスターペアレントに1教員で対応させない)、きょういくげんき塾(ベテランから新人へのスキル移転)、アドバンス研修(夏休みに3泊4日で東京学芸大学研修)、教育力アップセミナー(教員同士の研鑽)、いじめをなくそうサミット(子供たちによるいじめ撲滅)などを行っている。楽しくて力のつく湖南市教育では、子どもの自尊感情を育てることを基本に考えている。また、家庭的背景が原因となり問題行動や学力不振につながっている児童生徒への対応として、全国で初めて社会福祉士を教育委員会に配置し、家庭での課題にも取り組めるような体制を取った。その後、全国の自治体でも採用しはじめた。非常識が常識になった。

地域自治の課題解決では、地域の潜在的活力として、団塊の世代の総動員を心がけている。具体的には、小学校区を単位に、まちづくり協議会を通じ、地域ルネッサンスとして、地元産石の彫刻づくり、市民劇団with松竹、学区総合防災訓練、市民農園産物販売など。また、若い世代を市政につなぐため、湖南市JKプロジェクト(女子高校生の課外活動により、かわいい、うける、おしゃれな感性を反映させる)、未来湖南市政策コンテスト(15~39歳の若い世代がチームで政策提案を競う。H30年度当初予算に可能な提案を事業化)、中学校議会(市議会議場で、生徒たちが課題解決を議論し、まとめる)、あげあげ☆サミット(商工会青年部の企画した揚げものサミットに初期費用を支援。その後は公費なしで運営可能)など。

環境エネルギーの解決課題としては、地域自然エネルギーは地域のものという理念のもと、市民共同発電による経済循環(市民から出資を募り、地域商品券で配当)サツマイモバイオマス熱電供給(障がい者、高齢者などによる「こなんイモ・夢づくり農園」を通じ、バイオマス発電)、分散型エネルギーインフラ配置、木質バイオマス資源活用、スマートエネルギーによる強靭化(こなんウルトラパワー株式会社)などを進めている。特に、滋賀県立大学初代学長の日高敏隆さんの言われた「谷畑さんね、地球環境問題というものはないんですよ。だって地球全体を見たことのある人っていないじゃない。我々が身の回りで認知できるものを環世界と名付けていますけど、どこまで行っても環世界の集合なんですよ。」という言葉を大事にして、身近なところからの実践を心がけている。

観光交流の課題解決としては、面白いことには、入れ喰いで取り組みたいと考えている。湖南市への観光客は、周辺市町と比べても少ない。具体的には、国宝「湖南三山」の創出(湖東三山に対し、このキャンペーンのおかげで、困難三山といわれていたお寺に大勢の来客を迎えることになった)、仮想都市「こにゃん市」(バーチャル都市こにゃん市の猫の市長選挙などで、動物愛護と観光振興。ヤフーニュースでも猫から犬に市長が交代のとき話題になった。)、名探偵○ナンのふるさと鳥取県北栄町との友好交流協定、吉本興業との連携、十二坊トレイルラン&ウォーク、湖南市Vtuber Minami 誕生などを進めている。

産業流通の課題解決としては、RESAS分析を踏まえ、地域の特性を活かした湖南市型産業モデルを創出し、地域未来投資促進法の基本計画の策定による産業振興(特に、生産性向上特別措置法に基づく導入促進基本計画によって設置された機械・装置についての固定資産税を最初の3年間ゼロにすると記者発表したところ、経済産業省の課長が来訪。「自治体の反応がなく苦慮していた。湖南市の取り組みを全国展開したい」とのこと。)、みらい公園湖南を拠点とした新たな価値の創出(直販所、レストラン、情報発信機能を備えた拠点施設を整備し、地元農産物の生産・需要拡大、工場や研究農場とも連携した六次産業化)などを目指している。さらに、令和元年に「湖南市産業振興及び女性活躍推進等に係る奨励措置に関する条例」を制定した。企業立地促進に女性活躍推進や子ども子育て施策を合わせ技にした条例は全国的にも珍しい。これも、非常識が常識の一例。今後、湖南市の立地の良さを活かして内陸型国際物流拠点整備を大きく発展させたい。物流は単独市の問題ではなく、広域自治体の県に働きかけたが、物流担当部署さえなかった。民間の方が先に進んだため、コンテナマッチングや小口混載のメリットが減少した。この問題も簡単ではなかった。

多文化共生の問題解決については、湖南市の外国籍市民は、約5%、このうち南米系が61%、東南アジア系が22%。2005年に外国人対策関係課長会議を設置し、2007年湖南市国際協会設立、日本語初期指導教室設置、生活オリエンテーション開始、2008年湖南市外国人市民会議設置、2009年外国人のための就職サポート事業開始、2011年湖南市多文化共生社会の推進に関する条例制定、湖南市多文化共生推進プラン策定などを実施。平成30年改正入管難民法成立でますます外国人は増えてくる。ただ、これまでの状況では、生活者としての外国人支援政策は自治体なくして成り立たないにもかかわらず、法改正に対する自治体意見は十分に求められず、拙速の感が拭えない。外国人集住都市以外の自治体は、外国人の支援に不慣れで、外国人集住都市も多国籍化には苦慮することが予想される。地域のボランティアにも一定の限界がある。

まとめのようなものをお話しすると、現代は史上まれにみる大変革期。過去の成功体験は通用しない。周辺状況を十分観察し、状況を把握する必要がある。解決策の策定に向けては整理した状況から仮説を立てる。行政は責任があるため、急な変革は困難だが小さな変化は可。仮説から導かれる新機軸の政策を少しずつ実証する。実証施策が失敗すれば直ちに撤退し方向転換する。実証施策が成功すれば成果の拡大に向けて大胆に邁進する。成功した施策は他の自治体でもパクることが可能。自治体なので、何でもやればよい、根拠に条例を。自律した主体をさまざまなネットワークでつないで全体で自立。全自治体の取組で次世代に持続可能で強靭な日本を届ける。 大変革期には、古い常識に囚われず、新しい常識となるトレンドは何かをアンテナを高くして敏感に受け取り、精緻に制度設計して、大胆に取り組まなければならない。 最後に糸賀一雄語録を紹介したい。愛と共感の教育、発達保障、この子らを世の光に、異質の光、四六時中勤務、耐乏生活、不断の研究。そして、自覚者が責任者。 「自覚者が責任者」とは、「誰かがやるだろうと思ったら大間違いに決まっているだろう。気づいたヤツがやらなかったら、誰もやるわけないじゃん。やらなけれいけないと気づいちまったお前さんが責任者なんだよ。ちゃんと責任とれよ。」ということ。

(質疑応答)

●議会との関係はどうか。

>議会との議論は大変重要と考えている。行政は民意を受けて行うものであり、条例も議会の議決で制定される。福祉のところで話したように、「さりげなく」という表現を巡って対立したような例はあるが、基本的には、真摯に向き合えば、分かってもらえると思っている。

●大変、感銘を受けた。自治体の予算は、既定の経費が多く、新しい施策をやるにも予算が取れないという問題があると聞くが、どうしておられるか。

>基本的には、あまり予算を必要としない施策をやろうとしている。昔、県庁にいた頃、この問題を解決するため、既定経費は一律に削って、新規事業に大胆に充てる案を考えたこともある。

(文責  塚本 弘)

 

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