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2019.08.08

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忍びの里 甲賀 日本遺産の文化財群 甲賀衆結束の鎮守の杜

忍びの里 甲賀 日本遺産の文化財群 はじめに

「甲賀武士五十三家」は、ほぼ甲賀郡(現在の甲賀市・湖南市)全域にわたって分布し、その活動拠点となる中世城館の数も300を越えると云われます。甲賀五十三家を形成する末端組織は「同名中惣」と呼ばれ、これは惣領家と複数の庶子家からなる血縁を基本とする一族連合でした。「同名中」において、本家と分家の区分はなく対等であり、自ら「掟」を定め連携し結束を固めていました。『三方以起請文申合条々』によれば、1566(永禄9)年には「同名中」は更に近隣の「同名中」と小規模な地域連合を形成しています。柏木三家・荘内三家・南山六家・北山九家といった「地域連合惣」が存在し、これらを合計すると甲賀二十一家となります。

矢川神社に建つ甲賀郡中惣遺跡群の碑

 その後さらに連合の枠を甲賀郡全域に拡大し、「甲賀郡中惣」と呼ばれる一国規模にも相当する大きな連合組織を組み上げました。「郡中惣」では10人の奉行を選出し「惣寄合」がもたれ、合議制によって様々な決め事や問題解決に当たりました。一味同心にヨコに連なって諸事談合を行い、時には「多数決」「討入クジ」で決定する方法をとっていました。こうしたことからも、甲賀武士団の組織は、対等平等に「共和制」によって運営されていた事を伺い知る事が出来ます。また「甲賀郡中惣」は隣国の「伊賀惣国一揆衆」とも手を結び更に大きな組織体系を目指しています。『惣国一揆掟書』によれば、両国の境で「野寄合」と呼ばれる野外会議が開かれていたことが記されています。

【大鳥神社】
大鳥神社は、この地の甲賀衆大原氏の氏神で、毎年8月3日に今も大原一族が氏神の前に集まり、大原同苗講が続けられています。
882(元慶6)年に伊賀国阿拝郡河合郷にある篠山嶽から勧請してきたと伝えられています。当初は比叡山延暦寺の別坊として大原山河合寺と称され、近江守護となった佐々木家の崇敬を受けて庇護され、豊臣秀吉も社領を寄進、また桂昌院(徳川5代将軍綱吉の生母)も庇護しました。神仏分離令により、地名の大原荘と鳥居野に因み「大鳥神社」に社号を改称しました。(所在地:甲賀市甲賀町鳥居野782)
・国登録文化財建造物:楼門・拝殿・中門他(トップ画像は大鳥神社楼門)

大鳥神社 本殿・祝詞殿(中門)

大鳥神社の祭り

【矢川神社】
1570(元亀元)年、矢川神社の門前で、甲賀衆の自治組織である甲賀郡中惣によって争いごとの解決が行われました。矢川神社は甲賀衆の合議の場であり、集会場でもありました。創建伝承によると762(天平宝字6)年、甲賀杣・矢川津の守護神として勧請されたのが始まりと伝えられています。杣一宮として周辺22ケ村の精神的な支柱となり、中世には度々自治組織の総会が行われ、南北朝時代には北朝に与した甲賀武士団の拠点となり、1337(建武4)年には「杣野川宮」に集結後に南朝方の拠点となった「飯道寺城」を攻略しています。
その後も信仰の中心となり1842(天保13)年の近江天保一揆(甲賀騒動)でも農民達が当社で集結し起点となっています。(所在地:甲賀市甲南町森尻310)
・国指定史跡:【甲賀郡中惣遺跡群】神社境内地
・県指定文化財建造物:楼門

矢川神社 楼門

【新宮神社】
新宮神社の表門は1485(文明17)年に建てられた茅葺の八脚門です。新宮神社は、自治組織である甲賀郡中惣の活動の実態が知れる最初の記録にその名が見えます。
732(天平4)年に熊野大社の分霊を旧倉治村熊尾に勧進し、延暦年間に現在の地に遷座。1013(長和2)年に鹿島神宮の分霊・承応年間に勝手大明神を勧進したと云われます。周辺地域の大社で新宮郷9ケ村の鎮守とし広く信仰されました。(所在地:甲賀市甲南町新治)
・国指定重要文化財建造物:表門

新宮神社 表門

新宮神社 本殿

【柏木神社】
元は若宮神社と称し、水口柏木地域の伊勢神宮荘園の総鎮守で、地域の甲賀衆から信仰を集めました。
673(白鳳元)年、日吉山王を奉祀し大巳貴命を祀り、1190(建久元)年源頼朝上洛の折、鶴岡八幡宮の御分霊を合祀して多くの新田を寄進し、以降「若宮八幡宮」と称し、柏木荘16ケ村の鎮守として栄えました。(所在地:甲賀市水口町北脇189)

柏木神社

【檜尾神社】
甲賀衆の一人、池田氏の氏神として信仰された神社で、1706(宝永3)年に再建された極彩色の社殿には、1580(天正8)年池田信輝による本殿再建の際の棟札が残されています。
遙か昔、滝池に天津彦彦火瓊瓊杵尊が現れ、青竜に姿を変えて炎気の尾を垂れた事により勧請し「火尾神社」と称したと云われます。池田、滝村の鎮守社として篤く信仰されています。(所在地:甲賀市甲南町池田55)
・県指定文化財建造物:本殿

檜尾神社 本殿

 

写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー(大鳥神社の祭り、柏木神社)

 

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