関東だより:滋賀の酒蔵だより「ふるさとの景観を守る コツコツ造る旨い酒」

関東圏の滋賀県人会の会員の皆さまより、近況報告、趣味、旅行、日本社会や世界への提言、随想など、バラエティー豊かな投稿記事を募集し、東京県人会のHP「いま滋賀」に掲載します。
今回は、滋賀の酒蔵だより 第2回、福井弥平商店 福井 毅様からのご寄稿です。
滋賀の酒蔵だより「ふるさとの景観を守る コツコツ造る旨い酒」
福井弥平商店
蔵元 福井 毅
高島市の南の玄関口、湖中に朱塗の鳥居が建つ白髭神社のほど近く、北國街道沿いに建つ酒蔵で、銘酒“萩乃露”を醸造しております福井弥平商店の蔵元福井 毅です。手前どもの蔵はおかげさまで今年創業270年を迎えました。お客様への感謝の気持ちを伝えるべく社員全員でアイデアを出し合い、6月初旬から「ありがとうの気持ちを形にして伝えるプロジェクト」を始動しております。ご興味のある方は、弊社HPをご覧いただければ幸いです。
銘酒“萩乃露”
今回は、地域の皆さまと支えあいながら地元の景観と産業を守る弊社の取り組みをご紹介します。
琵琶湖が県面積の6分の1を占める滋賀ですが、実は森林面積は約50%。県内には山を切り開いて作られた棚田が多数点在しています。蔵のある旧高島町畑地区の棚田は、県内で唯一「日本の棚田100選」に選ばれた美しい場所なのですが、作業効率の悪さや獣害などが原因で近年休耕田が増加。農村の原風景が失われつつありました。
そこで蔵では20年前から、畑の棚田で収穫された飯米「コシヒカリ」を使い「純米吟醸 里山」という酒を醸造することで、景観を守るお手伝いを続けています。私が棚田保全の取り組みを知るきっかけになった地元ホテルの飲食スタッフらも、田植えや稲刈りはもちろん酒造りにも関わってくださるなど、棚田を通じて多くの人とのご縁が生まれました。
また、活動に賛同し毎年お米やお酒を購入してくださる方が主に東京や大阪など大都市の皆様だというのも興味深く、「地元では当たり前の風景」の大切さを理解し、応援いただけていることにたいへん感謝しております。
畑の棚田風景
一方、ここ数年で蔵を代表する銘柄になりつつあるのが「十水仕込 雨垂れ石を穿つ」です。
平成25年秋、地元で初めて契約栽培していただくことになった酒米「吟吹雪」の収穫直前に襲来した台風18号により市内の河川が氾濫し堤防が決壊。多くの住宅や田畑に甚大な被害を及ぼしました。吟吹雪の田んぼも浸水地域にありましたが、契約農家さんの迅速な対応で難を逃れ、無事収穫することができたのは奇跡のような出来事でした。
大切にしたい酒米は江戸時代の手法を使って醸造し、翌年秋「!(印刷用語で雨だれ)」を連打した様なデザインのラベルで「雨垂れ石を穿つ」と命名して販売、その濃密ながら爽やかな味わいの酒は多くのお客様に「!(驚きと感動)」の感想をいただくことができました。
雨垂れ石を穿つ
「雨垂れ石を穿つ」の言葉通り、今後も精進しながら先人から受け継いだ地域の環境や景観、人とのつながりを大切にこつこつと「旨い酒」を造り続けたいと思っております。
関東の皆様におかれましても、素朴で懐かしい趣のあるラベルの「里山」や「!」マークが印象的な「雨垂れ~」の酒瓶をお見かけになられましたら、ふるさとの景観を守る一助を担っていただきたく、ぜひ手に取り味わっていただきたく、よろしくお願い申し上げます。
株式会社福井弥平商店
〒520-112 滋賀県高島市勝野1387-1
Tel:0740-36-1011 FAX:0740-36-1633
https://www.haginotsuyu.co.jp/