関東だより:滋賀の酒蔵だより「地酒は地域と共に」

関東圏の滋賀県人会の会員の皆さまより、近況報告、趣味、旅行、日本社会や世界への提言、随想など、バラエティー豊かな投稿記事を募集し、東京県人会のHP「いま滋賀」に掲載します。
今回は、滋賀県酒造組合会長 喜多 良道様からのご寄稿です。
滋賀の酒蔵だより「地酒は地域と共に」
滋賀県酒造組合会長の喜多良道です。
滋賀では、平成28年に「近江の地酒でもてなし、その普及を促進する」条例が施行されるなど、県を挙げて地酒文化の盛り上がりを期待する声が高まりつつある一方、昭和40年代に100を超えた酒蔵の数は年々減少、現在の組合員数はわずか33蔵となってしまいました。しかしながら、比良、比叡、鈴鹿、伊吹などからの豊富な伏流水と、米どころとして誇れる高品質の酒米を使い、それぞれの蔵元が工夫を凝らして個性豊かな地酒を醸造することで、近年県内はもとより国内外のファンも増えつつあり、世界的な酒のコンテスト等で高い評価をいただく蔵元も現れてきています。
また、琵琶湖を取り囲むように点在する酒蔵が醸す酒は「地酒」として地元に愛される存在であるとともに、地域の農業やその風景、歴史を支える存在でもあります。このたび滋賀の地酒を貴誌に取り上げていただけることに感謝申し上げ、まずはわたくしどもの蔵の取り組みを紹介させていただきます。
喜多酒造のある東近江地域は、文字通り琵琶湖の東に位置し、鈴鹿山系からの伏流水と、酒造りに適した気候に恵まれ、県内でも比較的多くの酒蔵が残る地域です。文政3年創業の弊社は、昨年創業200年の節目の年を迎えました。県外はもとより、海外への販路拡大も視野に入れてはおりますが、蔵元、杜氏はじめ社員すべての思いは「地元で愛される酒を造りたい」に尽きます。
2008年から近江八幡市白王町の皆さんと取り組んでいるのは、ラムサール条約にも登録された琵琶湖の内湖“西の湖”に浮かぶ島状の飛び地「権座」で作った米で酒を造る、その名も「権座プロジェクト」。湖上に浮かぶ小さな田んぼに、田船で農作業に通う素朴で貴重な風景を次世代に残すための活動も10年を超え、若い世代も巻き込んだ地元の一大プロジェクトに成長しました。
田船を繋いで農機具や収穫した米を運ぶ、昔ながらの農作業
「權座」が勢揃い
18年3月、444年ぶりに復活したのは東近江市百済寺町に伝わる僧坊酒“百済寺樽”。室町幕府にも献上されていたと伝わる酒の復活をまちおこしの目玉にしようと17年春、寺・農家・農業団体らが協力し「百済寺樽復活プロジェクト」を発足。田植えや稲刈り、写経体験などで地域を応援してもらう“体験オーナー”の募集には、東京や大阪からの応募もあり、地域の持つポテンシャルの高さを改めて実感しました。一方、弊社はJA湖東や農家のみなさんと地域の気候や土質に合った酒米の選択や栽培方法などについて検討を重ねるとともに収穫した米を醸造する際には、杜氏の意見も取り入れながら「長く愛される酒に」と米のうまみを最大限に生かした味わい深い酒を目指しました。そうして出来上がった清酒「特別純米 百済寺樽」のラベルには、同寺を象徴する『三足土器』が描かれ、今年は2月中旬に新酒を発売。評判は上々と聞いております。
「三足土器」が描かれた百済寺樽ラベル
今回は、地酒をキーワードにした東近江地域のまちおこしの取り組みをお伝えしましたが、県内の蔵元は皆、地域の一員として「地元に寄り添う」酒造りに励んでおります。皆様におかれましても、近江の懐かしい風景を思い浮かべながら、それらを守り育てる地域住民の心意気を感じることができる「滋賀の地酒」をぜひ今宵の一献にしていただきたく、滋賀の情報発信拠点「ここ滋賀(中央区日本橋)」が運営する『滋賀の名品ショッピングサイト (https://cocoshigashop.jp/)』等で検索、お買い上げいただければ幸いです。
喜多酒造株式会社
〒527-0054 滋賀県東近江市池田町1129
TEL:0748-22-2505 FAX:0748-24-0505
https://kirakucho.com/
百済寺樽プロジェクト
https://hyakusaijitaru.com/